インタビュー 第2回

栗山 こまよ氏  道活 防災士・『入門・やさしい日本語』認定講師
「やさしい日本語で築く防災の輪
― 宍粟市での防災合宿から見えてきたこと」

聞き手: 西村多寿子

― 今回の防災合宿を企画された背景についてお聞かせください

栗山:防災士の資格は持っていましたが、実際に被災した経験がなく、避難所運営の現場を知らないことに課題を感じていました。そんなとき、「やさしい日本語」の講師や多文化共生に関心のある仲間と一緒に、宍粟市(しそうし)で防災合宿をしようという話になりました。

宍粟市は山間部にある人口3万3千人の町で、約400人の外国人が暮らしています。私は市の国際交流協会の理事として、日頃から外国人住民の視点を防災にどう取り入れるかを考えており、「誰もがわかる」情報発信の大切さを伝えたくて合宿を企画しました。第1部のAED講習会では、地元の消防職員や応急手当普及員、市の防災担当者などの協力を得て、地域と連携した実践的な学びの場を目指しました。

― 合宿のプログラムについて教えていただけますか?

栗山:3部構成で、第1部がAED講習会、第2部が防災講演、第3部が炊き出しを含む避難所体験でした。まずは、私が企画・作成した冊子『「やさしい日本語」でつなぐ命  AEDを使った心肺蘇生法』を使って講習を行いました。

講習では、赤ちゃんから成人女性まで4種類のダミー人形を使用し、年齢や性別に応じた救命方法を学びました。外国人参加者からは「自分も助ける側になりたい」という声が上がり、主体的な参加が印象的でした。地方では若年人口が減り、「地域を支える若者=外国人市民」という現実を実感するなか、「日本人を助けたい」という前向きな声が寄せられることは、大きな励みになりました。

一方で、自国にもAEDはあるけれど講習経験がなく、デザインや言語の違いに不安を感じていた参加者もいました。「やさしい日本語」で作ったテキストは、外国人だけでなく日本人からも「見やすく、わかりやすい」と好評でした。入門編として、対象を限定せず実施できる手応えも感じました。

防災講演では、阪神淡路大震災の被災体験を紹介してもらい、平時からの備えの大切さを学びました。また、「日本の常識は世界の常識ではない」という外国人視点の重要性を再確認しました。

防災かるたのワークショップでは、地球っ子グループ多文化子育ての会Coconico代表・井上くみ子さんの進行で、『絵札を見て読み札を考える』という通常のかるたの使い方と違った工夫を凝らし、外国人も日本人も一緒に楽しみながら防災を学ぶ機会となりました。

― 避難所体験は、山間部にある廃校で行ったそうですね。 

栗山:はい。携帯電話の会社によっては電波が届きにくく、近くに商店もないため、日常生活では週に数回やってくる移動販売車が頼りとなるような地域でした。物資不足や通信困難といった「災害時のリアル」を体感しました。

避難所の部屋割りでは、男女別・家族単位・隔離スペースなどを考慮しました。部屋割り表や入浴の案内(写真)を、難しい日本語のみのフリガナなしで作っていたことに後で気づいて反省しました。

炊き出しは、参加者が家庭から食材を持ち寄る形式で、現実的な避難時の状況を模擬しました。食物アレルギーや文化的背景に配慮し、食材の情報は「やさしい日本語」で表示し、いつも使ってるものだとデザインで判断してもらえるよう、食品パッケージや調味料の現物も掲示しました(写真)。衛生管理では、エプロンや三角巾を持ち合わせていなかったことや、マスクや手袋の着用忘れが課題となり、災害時にはこうした備えも重要であることを実感しました。

生活ルールの周知も重要なテーマでした。ゴミ分別、入浴・消灯時間、音量などのルールは、日本人同士でもトラブルの原因になります。「常識だから伝えなくてよい」は通用しません。特にゴミ分別は市町村によって異なるため、市外からの避難者にも伝わるよう「やさしい日本語+イラスト+必要に応じた多言語」で案内すべきだと思いました。非常時特有の生ごみや汚物の処理ルールも、事前設定と掲示の重要性を改めて感じました。

全体を通して、ルールや表示の周知には「やさしい日本語」と視覚的な工夫が不可欠であると実感しました。イラストやピクトグラムを併用することで、言語の壁を越えた情報共有が可能となり、参加者の理解も深まるとの意見も多くありました。

―合宿を通して見えてきた今後の課題や展望について教えてください。

栗山:進行中、参加者自身が「やさしい日本語」を意識し続けることの難しさを感じました。情報発信は簡単ではありません。「常識は人それぞれ」という前提を持つことが何より大切だと実感しました。

日本人同士でも騒音やルール違反は起こります。子ども、高齢者、障害のある方への配慮も不可欠です。「何も手伝いをしないのは居心地が悪い」という意見がありました。「できない」と決めつけるのではなく、「できることをできる範囲で手伝ってもらう」空気づくりが求められます。

また、「やさしい日本語」は、ある程度日本語の学習経験がある人でないと伝わりにくいこともあります。だからこそ、外国人住民が安心して日本語を学べる場をつくることも大切だと思います。日本語力の向上は、災害時の情報理解に直結し、防災力の向上にもつながると感じています。様々な場を通して地域で顔の見える関係性を築くことはお互いを知り、共助の第一歩につながるのではないでしょうか。今後もこうした実践を重ね、誰一人取り残さない防災を目指していきたいと思います。

後記:
後日、参加者による反省会とアンケート調査を実施しました。
反省会では、簡易トイレの作成や断水・停電の設定など、次回挑戦したいアイデアが多く出ました。外国人市民や障がいのある方にもぜひ参加してほしいという声も多く聞かれました。
アンケートの声を一部ご紹介します。

【AED講習会について】
「疑問に思っていた点に丁寧に答えていただき、消防の方々の熱意が伝わりました。栗山さんの『やさしい日本語』講習を外国人と共に行うことは、非常時の接し方を学ぶ良い機会にもなると思います。」

【防災講演会について】
「具体的な体験談が参考になり、カルタなど楽しい教材も紹介され、楽しく学べました。時間が短かったのが残念でした。」

【避難所体験について】
「防災士としても、実際に体験して初めて気づくことが多くありました。実際の避難所生活はより厳しいと思いますが、今回の体験から多くのことを想像し、備えるきっかけになりました。」

詳しくは、以下のURLをご覧ください。  「やさ日×防災合宿アンケート 結果」

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